暗号資産を投資、投機の対象となる金融商品とした見れば、価格変動により利益、損失が発生することがメリットでもありデメリットとなりますが、ここでは、暗号資産そのもののメリット、デメリットについてご説明します。
メリット
金融機関を介さず簡単に送金ができる
一般的な銀行を介して行う海外送金の場合、送金できる限度額が設けられており、数千円程度の送金手数料がかかります。また、手続きのタイミングや方法(インターネット、窓口等)によっては、送金が完了するまでに時間を要する場合があります。
これに対して、暗号資産では、相手先が個人でも企業であっても、取引所を介して相手先の情報(ウォレットアドレス)を指定し送金額を伝える(入力する)だけで、素早く送金することができます。その速度は暗号資産の種類によって異なりますが、ビットコインの場合、数十分程度(※1)で送ることができます。また、送金手数料(トランザクション・フィー、※2)は、暗号資産の種類や当該ブロックチェーンネットワークの状況によって異なりますが、数百円程度から可能であり、銀行に比べて低コストで送金することができます。
※1.ビットコインの場合、理論上、約10分となりますが、取引量の増加時には、ブロックチェーン・ネットワークにおける承認(取引の処理)に時間を要する場合があります。
※2.トランザクション・フィーは一律ではありません。取引量が増加した時など、ブロックチェーン・ネットワークの混雑状況等により変動します。
いつでも、少額から取引できる
暗号資産は世界中で取引されており、ブロックチェーン・ネットワークは24時間365日稼働しています。日本国内の取引所でも、その多くは、メンテナンス時間等を除きいつでも、また数百円程度と少額から取引することが可能となっています。
※実際の取引ルールは各取引所により異なりますので、各取引所のホームページ等にてご確認ください。
拡大するマーケット
代表的な暗号資産に関するデータアグリゲートCoinMarketCapの情報によると、2021年上半期に2,265種類の暗号資産をデータベースに追加し、世界中で上場された暗号資産の数は合計10,810となるなど、2021年に入り暗号資産の種類が急増しています。
このうち、日本国内の登録暗号資産交換業者が取扱う暗号資産はビットコインやイーサリアムをはじめとし数十種類程度ですが、日本暗号資産取引業協会の統計によると、現物ベースの取引高は数兆円規模に拡大しています。
実際にビットコインの円換算価格は、2020年12月末時点で約300万円でしたが、2021年4月中旬には一時高値が700万円を超えました。
年月 | 現物取引高 |
2021年6月 | 2兆3,176億円 |
2021年5月 | 5兆1,584億円 |
2021年4月 | 4兆1,838億円 |
2021年3月 | 3兆4,198億円 |
2021年2月 | 4兆1,710億円 |
2021年1月 |
3兆8,693億円 |
(出所:日本暗号資産取引業協会 統計情報「暗号資産取引月次データ」)
比較参考までに、店頭FX取引の2021年7月出来高は約479兆円、暗号資産は現物取引と証拠金取引の2021年6月合計出来高は約6兆3千億円となり、その規模はまだFX取引に及びませんが、暗号資産取引が拡大し始めたのは2016年以降であり、ここ数年で暗号資産取引の市場は急成長しています。
もちろん、暗号資産の将来については各国の規制強化などネガティブな要素がありますが、世界では決済手段としての実用化の進展や大手企業の参入、実用化のためのスケーラビリティの改善など、今後の市場拡大が予想される要因も数多くあげられ、暗号資産、ブロックチェーン技術に関して、世界的な注目度は年々高まっていることが伺えます。
デメリット
価格変動が大きい
価格変動が大きいそもそもの理由として、暗号資産は為替や株式などと比較するとまだ取引量が少ないため、大口の売買により変動が大きくなりやすいということや、1日あたりの価格制限(株式でいうストップ高やストップ安)といった価格変動に対する制限がありません。そのため、世界のどこかで大量の購入または売却が行われると、それに連れて価格が大きく変動しやすいという特徴があります。
また、日本円や米ドルなど法定通貨は、中央銀行が金利政策等により供給量をコントロールしますが、暗号資産は中央管理者が存在しないため、需給バランスが直接価格に影響し変動が大きくなりやすいという特徴があります。そのため、現状では投資目的として売買されることが多くなっています。また、このために決済手段として使いにくいという問題があり、実需が増加しにくくなっています。
ただ、昨今、米電気自動車大手テスラ社がビットコインによるテスラ車の購入を可能にする計画を公表したことや、米決済大手ペイパルが複数の暗号資産による決済を可能にするなど、米国発で実需を喚起するような動きが見え始めています。
また、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)というブロックチェーン技術を活用した偽造不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータが取引されるようになりました。NFTの多くはイーサリアム・ブロックチェーン上で取引されており、NFTマーケットの活況により暗号資産イーサリアムもその評価を高めています。
ハッキングや紛失の可能性
近年、企業だけでなく個人もハッキングやウィルス、フィッシング詐欺等に合う被害事案が増加しています。取引所に預けていた暗号資産が盗まれた場合、その取引所が破産してしまうと預けた暗号資産は戻ってこない可能性があります。また、個人の所有するウォレットのID、パスワード等の情報をフィッシング等により知らぬうちに抜き取られてしまうと、所有する暗号資産が知らぬ間にどこかに送金されて消失してしまうという可能性もあります。こうした被害にあった場合でも、原則、暗号資産の管理は自己責任となり保証されるものではありません。
また、取引所ではなく個人所有ウォレットの秘密鍵を失くしてしまった場合、バックアップを保存していないと、所有する暗号資産を取り出すことができなくなるといったリスクもあります。
現在、取引所は、お客様から預かる暗号資産の盗難防止のために、多くのコストをかけて対策を実施していますが、個人においても不用意なサイト閲覧によるウィルス感染やフィッシング被害に合わないように、ウィルス対策ソフトの導入はもとより、送り元の不明なメールに記載されてリンクは不用意にアクセスしないなど、慎重なインターネット利用が求められます。
各国の規制
ブロックチェーンの状況は、インターネット上で公開されているため誰でもアクセスすることができますが、ウォレットのアドレスは分かるものにそれを所有する個人名は当然存在していません。この「匿名性」が暗号資産の特徴の一つでもありますが、反面、マネー・ローンダリングや犯罪などに利用されるリスクがあります。
こうしたマネー・ローンダリング等への対策のため、国際組織であるFATF(マネー・ローンダリングに関する金融活動作業部会)では多角的なルールを策定し、実質的に参加国への強制力を持つガイダンスを勧告という形で公布し、参加国、取引所とも様々な対応を行っています。日本においても、今後、新たな規制が導入され、これまでの利便性等が阻害される可能性があります。
本内容は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、記載している情報等は作成現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがあります。投資にかかる最終決定はお客様ご自身の判断と責任で行っていただきますようお願いいたします。 なお、本内容は正確性を期すため慎重に作成していますが、完全性を保証するものではありません。本内容によって損失が生じた場合においても、当社は一切の責任を負いかねます。予めご了承ください。 |